物流費値上げ、便乗するなら今がチャンス! 
ヤマトホールディングスが運賃値上げに向けた検討を始める。人手不足に加え、アマゾンをはじめとするネット通販の荷物増加にもはや耐えられず、現場は限界に達しているという。確かに現場は限界なのだろう。休みもない、サービス残業は当たり前、休憩時間もとれず、しかも2割が再配達ときては。
ここ数年、宅配を中心とした物流業をとりまく環境は悪化の一途をたどっているといわれている。荷物が増えて人手が減っているのだから当然といえば当然だが、ではネット通販の興隆以前、現在のような人出不足に陥る以前の現場に余裕があったかというと、決してそうではないような気もする。現場はいつだって限界に近い状態で回っていたような気がしてしまうのである。もちろん現状が大変ではないということではない。現場は常に大変だったという意味だ。
で、運賃値上げによってこうした状況が変わるかというと、おそらく今度も変わらないのである。1日17時間休憩なしに働いて残業代なしなどという働き方は減るだろうが、今後すべての物流の現場が余裕をもって働くことができるようになるかというと、答えはNOのようだ。今回のヤマトの運賃値上げや働き方の見直し、宅配大手同士による共同配達の推進などはあくまで現状をベースとした最適化であって、要は回らなくなってきたものを回すための施策。改善を目的とした効率化策(もっとよく回すための施策)とは別物と考えるべきといわれている。これまでギリギリの運賃・保管料でやってきたのはどこも同じだし、どこの現場にも余裕はない。効率化はともかくこの際便乗でもいいから上げられるものは上げておきたいというのが物流業の大方の本音だろう。
ヤマトはまた、膨大な量の未払い残業代を調査しあらためて支払うと発表している。だがこれも払うべきものを払っていなかっただけのこと。これを「改善」の一環などと捉えられては本末転倒だ。ヤマトの運賃値上げ言及による物流費値上げ機運の醸造を期待する声が上がっているようだが、未払い残業代について追随しようという声は聞こえてこない。ヤマト以外に未払いがまったくないというのならいいのだが。
従業員と経営者の利益が相反するような会社や、未払いの残業代を払ったら利益がでないなどという会社はもうないとは思うが、もしあるのなら、便乗して是正するいいチャンスかもしれない。いやあってほしくはないのだが。
久保純一 2017.03.20