物流不動産ニュース

物流、物流不動産、倉庫を網羅した
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「物流のプロ」だけがわかっていないこと 

先日、土地活用事業専門の企業を訪問した際のこと。ちょっとした打ち合わせと情報交換のはずが、いつの間にか新規事業担当者の質問責めに。その質問内容は「物流不動産について」。要は、倉庫や物流施設を土地活用の選択肢に持っておきたいということらしい。物流業界の現状や物流不動産の市場構造、最近の動きから展望まで熱心に質問され、予定の時間をオーバーするほど。門前の小僧として知る限りのことに答えてきたが、物流不動産への関心をより高めてもらえたらうれしい。それにしてもその好奇心というか熱意には圧倒されてしまった。

一方、とある物流業者の集まりに参加したときのこと。懇親会の雑談で物流不動産についての話題を振ってみたのだが、見事なほど関心はゼロ。ほとんどが「なんか最近話題になっているらしいけれど、あれは不動産屋がやることだから我々には関係ない」といった反応。「外資系や大手不動産系の大型施設が増えてきて危機感を持っている」くらいの反応はあるかと思ったのだが。いやあったのだが、結局のところ「我々には無関係」という結論に陥ってしまうのだ。筆者の話術に問題があるというのなら理解できるのだが。私の話し方、そんなにまずかったのだろうか。

実際、大型の物流施設を建てて利益を上げているのはほとんどが不動産業者だ。しかもその手法は不動産開発のセオリーからすこしも外れることが無い。計画立案から資金調達、建物設計、リーシングまで、不動産開発のお手本のようなやり方といっても過言ではない。数年前、旧財閥系不動産会社の物流施設部門設立について取材した際、物流出身者がいないと聞いて驚いたことがある。だが昨今のデベロッパー各社の動きをみて、 “売れる倉庫”を建てるのに物流の経験は必須ではないということをあらためて実感している。物流施設は不動産のノウハウで充分構築できてしまうのだ。

不動産業が、いわゆる物流業と相いれない部分があるのも納得できる。しかし大規模高機能型物流施設がこれだけ“売れている”というのに、それを「関係ない」といって直視しようとしないのはどういうことなのだろう。物流業者が物流だけでじゅうぶんな利益を上げているのなら「関係ない」でもいい。だが実際はどうなのだ。物流だけでは儲からないと言われてから、どのくらいたつというのだろう。

新築の大型施設と既築の中小倉庫はバッティングしないという人もいるかもしれない。だが、そもそも大型倉庫の新規開発だけが「物流不動産」ではない。既存物件の活用だって、それにともなう周辺事業だって物流不動産の一環なのだ。アセットを活かして何がいけないのだ。物流屋が不動産で儲けて何がいけないのだ。

物流業を長年やってこられたみなさん。みなさんは物流のプロである。「倉庫のことなら任せておけ」と自身を持って言える、物流のプロである。物流に関することなら不動産屋なんかよりはるかに詳しい。どこにどんな倉庫を建てればいいかなど、みなさんの手にかかればすぐにわかってしまう。

では、物流の素人である不動産屋が物流施設で儲けて、プロであるはずのみなさんが儲かっていないのはどうしてだろうか。

 久保純一 2017.04.20