倉庫オーナーのステータス 
一般的に、賃料収入が見込める不動産のオーナーは高いステータスにいると認識されている。ちなみにここでいうステータスとは社会的地位や身分のこと。実際に何が偉いのかは知らないが、賃料収入=不労所得=金満な印象を与えるのだろうか。筆者自身は、こういった考え方は好きではない。不動産オーナーなど単なる職業のひとであって、職に貴賤はない。はじめるのに巨額の資金や、高度な知識、ノウハウが必要という意味で言えば、確かに誰でもなれるものではない。しかし、だからといってステータスがあるというのはちょっと違う気がする。
しかし現実にはけっこういるのである。代々土地を所有している自分は特別で、高いステータス性を有していると考えているオーナーが。自分のことを偉いと思っているくらいだからエライのだろうけれども。
で、そういう人たちのなかでは、どんな物件をどこに保有しているかでランク付けが変わってきたりする。基本的には、より収益性の高い物件を所有している方がエライ。要するに、一等地に大きな物件を持っているのがステータスなのだ。
この不動産オーナーのステータスはもうひとつある。要は、建物の用途によるステータスである。こっちはどちらかというと欧米よりの見方で、厳密なランク付け法があるわけではないが、収益性や規模はそれほど重視されない傾向にある。建物の歴史や知名度、セレブリティからの評価なども判断基準になっている点が特徴的だろう。
さて、そのなかで最もステータスが高いといわれるのがホテル。実際、洋の東西を問わず不動産王と呼ばれる人たちはホテルが好きだ。高級ホテルの方がステータスが高いのは言うまでもない。で、次が高層ビル。これはもう単純に、高いものはエライという理論から来ているのだろう。日本では高層ビルを個人レベルで所有するのはまず無理だが。次に挙げられるのが、日本ではあまりなじみのない高級アパートメント。著名な人が住んでいたりするとステータスが上がるというのは納得できる。他には高級店が入る店舗、著名な作物を産出する農園、ゴルフコースなどもステータスが高い不動産物件といわれている。
で、我らが倉庫だが、残念ながら高いステータスを有しているとは言い難い。歴史的な価値が認められている建物なら別だが、それはほんのひとにぎり。倉庫を所有にステータス性が認識されれば、中小の物流不動産にも個人資金が流入するのに、というのは虫が良すぎるか。ただし倉庫オーナー同士のステータスは存在するようで、創業が古い方がステータスが高いと認識される場合が多い。これはステータスというより業界での立場かもしれない。
建物の用途によってステータスが違うというのは、一種の文化と見ることもできる。だが大きな収益を得る建物を持っている方がエライという考えは、ただの背比べでしかない気がする。真のステータスとは社会的資源の大きさではなく、責任の大きさで量られるべきなのではないだろうか。
久保純一 2017.08.05