物流不動産ニュース

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オタクのみなさまを支えるロジスティクス 

東京・有明の展示場「東京ビッグサイト」で開催されるイベントのなかで、1日あたりの来場者が最も多いもの。それはモーターショーでもギフトショーでもない。「コミックマーケット」だ。

同人誌の即売イベントとして世界最大の規模を誇るコミックマーケット、通称コミケは年2回、お盆の時期と年末に3日間づつ開催される。入場まちの行列の長さが報道されることも多いが、例えば昨年夏に開催された「コミケ92」は来場者総数50万人、参加サークル数3万2000、企業ブース176社という規模で、話題になるのもうなずける。昨年末に開催された「コミケ93」では、初日の来場者数が18万人と過去最高に並んだという。

コスプレしたり企業ブースのイベントを見たり、一種のお祭りとして楽しむこともできるが、あくまで「同人誌の即売会」なので、参加サークルは指定されたスペースで自身がつくった同人誌を売り、来場者はそれを買いに来るというのが基本。で、大変なのが各サークルの準備だ。

限られた部数とはいえ本は重い。そこで遠方からのサークルや部数の多いサークルは、事前に同人誌を宅配で会場まで送っておくのである。言葉でいうと簡単だが、サークル総数は約3万2000。単純計算で1日あたり約1万700サークルがブースを構えるのである。ここに、それぞれのサークル宛てに荷物が届く。総務省のデータでは、岩手県遠野市の世帯数が約1万700。そして現在、サークルの搬入にはゆうパックが使われている。全てのサークルが宅配を利用するわけではないが、単純に考えれば河童と民話の街と同程度の郵便インフラが必要ということになる。もちろんブースまで郵便局員が届けてくれるわけではなく、会場内に設けられた宅配便引き渡し所に受け取りにいくのではあるが。

3000部以上の大量搬入や印刷会社からの搬入などは別だが、それでも宅配利用サークルは相当な数にのぼる。特に昨年末は宅配各社の値上げなどが影響し、ゆうパックはパンク寸前と伝えられた。コミケ93でも遅配が懸念されたようだが実際には大きな混乱はなく、比較的スムーズだったという。

コミケの物流にはもうひとつ、会場から自宅までの配達というものもある。こちらは財布の中身を同人誌へと昇華させ過ぎた参加者や、同人誌市場の要望を読み違えてしまったサークルなどが利用する。こちらもなかなか盛況で、受付に行列ができることも少なくない。

実は筆者も、友人が主宰するサークルの手伝いとして何回か参加(他の友人によると「行列して入場しなければ参加したとは認められない」のだそうであるが)したことがある。毎回のように出展している彼は手際よく搬入し、売れ残りもほとんどださないため搬出も楽であった。彼いわく「宅配はお金がかかるから」。疑似的なものではあるが、商流と物流の関係を目の当たりにしたようで実に面白かったのを覚えている。

 

久保純一 2018.01.20