あれ? 倉庫が 余っているよ 
日経新聞が物流施設の供給過剰を懸念する記事を載せ、話題になった。供給の主流となっているのは大規模高機能のマルチテナント型施設だが、もともと倉庫建築は建設期間が短い。マンションやオフィスビルに比べ供給スピードが異様といえるほど早く、開発タームも短い。成長期から成熟期を経て衰退期に入るスパンも、当然短いだろう。特にここ1~2年ほどは、他の経済誌でも同様の懸念が記事になることが増えていたように思う。
そもそも物流の量は増えていない。横ばい、もしくは微減とされることもあるが、いわゆる国内の物流不動産は「箱が増えて中身が増えていない」という構造的な問題を抱えているのである。もっとも量は増えていないとはいえ頻度や個数は増えているし、以前とは流通経路も大きく変わっている。こうした変化への対応は必要だが、ニーズの見極めがなおざりになっている気がしてならないのだ。土地があるからニーズを見極める前に建ててしまおう、というデベロッパーの動きに既視感を覚えるのは筆者だけではないだろう。建てたもの勝ち、早い者勝ちでは、まさにバブルだ。
今から7年ほど前だろうか。大規模高機能型物流施設を多く手掛ける外資系デベロッパーを取材したときのこと。
「物流施設はバブルにはならない」
代表は、筆者に断言した。当時、国内における大規模高機能型物流施設の普及率は2~2.5%ほどとされていた。これに対してアメリカでは30%以上の普及率で、まだまだ国内の伸び代はある。だからバブルにはならないという読みだったのだと思う。
当時からすでに倉庫は余っていたのだ。厳密に言えば、バブル期以降倉庫はずっと余っている。従来型倉庫の賃料は底を打って久しいが、このまま供給が増えれば、大規模高機能型物流施設の賃料も確実に下落の局面に入る。新規開発と既存物件の活用はセットで考えないと、やがて自分の首をしめることになる。
その当時、物流施設バブルを懸念する声は少なからず挙がっていた。まさかとは思うがその声が今になって物流業界に届いているのだとすれば、とんでもないタイムラグだ。
久保純一 2018.6.20