物流不動産ニュース

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物流はいつロジスティクスになるのか 

先日来、物流企業トップのインタビュー集を読んでいる。10年ほど前にまとめられたものなので、昨今の状況と比べてみるといろいろとおもしろい。当時すでに物流業界は大きな変革のさ中にあったわけだが、それがこの先どう変わるかまでは誰も正確に予想していない。eコマースが普及し物流経路にも変化が促されるなか、同業他社との差別化には物流品質向上で対応できると息巻くトップもいて、かえって頼もしかったりする。

どのインタビューも個性が溢れ興味は尽きないのだが、運送・運輸から脱却して3PL化の実現に言及するトップが意外に多く、ちょっと驚かされた。物流の発展の可能性を3PLに求めていたのだろうが、さらに飛躍して「ロジスティクス全般を請け負う」というトップもいた。その言葉には、物流がロジスティクスの中核であるべき、という気概のようなものさえ感じる。

言うまでもないが、ロジスティクスという言葉は物流と同義ではない。ロジスティクスの本来の訳語は「兵站」であって、これは需要予測から原料調達、製造、保管、輸送など、必要物資の調達と移動、そして消費に関わるファクターが全て含まれている。場合によっては装備のメンテナンスや会計などの後方業務全般が含まれることさえある。一般的な概念としては、ロジスティクスは物流よりも商流が近いだろう。その商流も、ふつうは複数の企業が役割を分担して構築されている。軍隊のような自己完結性の高い組織であればともかく、これらの機能を全て保有して需要予測から消費者の手元へ届けるまでの一連の流れを独自に構築している企業は、筆者は1つしか知らない。アマゾンである。

これもよく言われているところだが、結局のところアマゾンがやっているのは(兵站という意味での)ロジスティクスなのである。需要を予測(あるいは創出)し、商品を調達して、届ける。書くだけなら簡単だが、いわゆる物流業にこれができるかと言えば、残念ながら難しいと言わざるをえない。物流は、このなかの「届ける」機能しか持っていないのだ。

あるいはサプライチェーンを応用できるという意見もあるかも知れない。確かにある程度確立されたサプライチェーンであれば、応用はできるだろう。しかし物流が、ロジスティクスの一部ではなくその全ての機能を果たそうといのであれば、商品を調達し、その売り先を見つける機能が必要になる。兵站という意味でのロジスティクスの第一歩である需要予測は、単純な予測ではなく実需が伴う。食糧も弾丸も、必ず消費されるのだ。消費されない、あるいは予測を超えて消費された際のリスクは、すべて自身に降りかかってくるのである。

冒頭のインタビュー集で「ロジスティクスを請け負う」と言ったトップたちのなかで、実現した例はまだないようだ。

 

久保純一 2018.7.20