2019年的見方 
昨今、さまざまな分野で「変革」が起きていると言われている。個々の業種や業態における変革はもちろんだが、その理由や背景も枚挙にいとまがない。AI の進化と自動化、SDGs、エネルギー自由化、MaaS、シェアリングエコノミー、働き方に通貨の概念。変革の理由や変革を可能にした技術、変革を促した事象にこれだけ注目が集まっているというのも、過去に例がないのではないだろうか。
例えば MaaS。自動車をはじめとしたモビリティのあり方を大きく変えるといわれているが、これが進めばもちろん物流も変わる。現段階でのMaaSはマイカー以外の交通手段の円滑利用を指し、具体的にはそれを可能にする経路検索サービスや決済サービスを意味することが多い。ところが昨今、成長しつつある MaaS への危機意識からか、自動車会社が MaaS との接点を模索しはじめている。トヨタの「脱クルマ会社」宣言などはその顕著な一例だし、実際に車に必須の機能として「走る」「止まる」「曲がる」以外に「つながる」を挙げている。車の通信機能が充実し、その保有形態が変われば、マイカーも MaaS の構成要素のひとつに加わることができるだろう。物流においていえば、このマイカーをそのままトラックと変えて読むだけである。
冒頭で述べた「変革」によって変わるのは、もちろん自動車だけではない。それぞれの変革は相互に影響し合い、さらに大きな変革を生み出す。いずれは建物の姿はもちろん、街の姿も大きく変わるだろう。
今さらだが、筆者の連載の目的のひとつは、モノゴトを不動産的な側面から見る習慣を持ってもらうことにある。物流と不動産はどうも水が合わない、そんな風に言われてきた両者も、いまや物流不動産というひとつのジャンルでくくられることが多くなってきた。これまで物流に従事してきた皆さんに、不動産を通した見方をしてもらえたら、もっとビジネスの幅は広がるのではないだろうか。そんな思いから始めたコラムである。そもそも物流と不動産はどちらも社会インフラという点で等しく重要だし、倉庫や物流施設はまぎれもなく不動産だ。その親和性が悪かろうはずはないと考える、筆者はそのひとりだ。
不動産にせよ物流にせよ、個々の分野だけでは語ることができなくなっているほど、世の中のビジネスは交じり合い、それぞれが与える影響も大きくなってきている。現在進行中の変革がどんな影響を与えるのか。いずれも100年に一度の変化とか開闢以来の変革などといわれている点、なにやら激動の時代の予感さえして妙にわくわくしてしまう。あるいは不動産的見方とか、物流的見方という言葉さえ、そのうち意味をなさなくなってくるのかもしれない。望むところである。
久保純一 2019.01.05