金融不安で2000兆円の金が消えたというけれど − 1 
日経新聞によると、今回の金融不安で、2007年10月末に比べて世界の2000兆円の金がなくなったともいう。「一体、どこにそんな金があって、どこに消えたのか」。そんな質問を受けた。
簡単に言うと、そんな金はもとからなかった。あるように信じていた金が、実はなかったと気づいただけだ。
手近なもので例にとろう。美術品では、人それぞれに感覚が違う。そのため、鑑定士がいる。ある古い壷を1万円で買ったとする。この時点では、壷の価値は1万円。それを鑑定士に見せたら100万円の価値があるとした。周りの人は、その壷の価値を100万円と信じる。この壷には1万円という現金と99万円の見えない金、価値がついたことになった。これを聞いて、150万円、200万円で買いたいという人が出れば、その壷の価値は、売買されなくても釣り上がる。
しかし、ここに別の鑑定士が、「この壷は偽物で100円にもならない」と言えば、その壷の価値は100円以下だ。1万円で買った壷が100円になっただけだが、周囲は150万円、200万円といわれた壷が100円に大暴落をおこしたと感じてしまうだろう。