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延 嘉隆の物流砲弾<18>今更・・・、私とロジスティクス【後編】 

今更、私とロジスティクス三部作の最終回。遠い遠い、過去、政治を目指した人間からロジスティクスはどう見えたのか?、今、どう見えるのか?という点などを綴ってみたい。

繰り返しになるが、昨年の“キレっキレっ”の文章とは異なり、マッタリしたトーンに多くの没落者が出たものと推察する。しかし、それで構わない。「物流不動産NEWS」をご覧の10%の方にご覧頂ければそれでOK!との揺るぎないスタンスで臨む。とはいえ、特に、明確な主張は無い&文章の繋がりも無い!

製造業のメリットが薄い内陸部、JCT機能と雇用に着目


筆者が生まれ育った福岡県久留米市は、広大な筑後平野の真ん中・・・といえば聞こえはいが、見方を変えて、企業誘致という点では、原材料を港から工場まで運び、製品を工場から港まで運ぶという業務プロセスが発生する(*それを製造業ではムダと考える)。あくまで一般論ではあるが、企業誘致という点において、なかでも、企業誘致のメインターゲットである製造業でいえば、アドバンテージがあるとはいえない。そのような立地の位置づけになる。

天下国家議論はさておき、地方から政治家を目指す人は、少なからず、(大半が廃れゆく)地方の産業振興という課題に直面する。地域の人は、“ブリヂストン創業の地”と古き良き時代に思いを馳せるが、“サプライチェーン”という言葉は、一切、“懐古主義”を考慮するものではない。

工業団地にある様々な事業所を見て廻りながら、“ピン”ときたのが、とある卸の物流現場だった。倉庫の大きさ・・・もさることながら、そこで働いている人の多さに驚いた。正規雇用ではないにしても、少なからず相当数の雇用には繋がるのではないか、建築・保守・警備などの付随する仕事もある・・・。素人ながらにそう感じた。無論、そういう発想を後押ししたのは、隣接する佐賀県鳥栖市にあるジャンクションだった。

果たして、“素人発想”はどうだったのか?


“素人発想”から20年近くが経ち、些少ながらも、物流の専門家としての知見も身に付いてきた。近頃、少なくはなったが、企業誘致を希望する自治体から、工業団地等への物流企業誘致の相談を受け、助言することもある。その立場で、稚拙な発想を省みてみたい。


結論からいえば、以降、九州内のロジスティクス網(*島内物流)の中心として、鳥栖市には多くの物流センターが出来た。“素人発想”の頃の鳥栖市の人口は約6万人。今では、約1万人増の約7万人。実に、20%近い人口の伸びを示している。鳥栖市の4倍強、約30万人の久留米市の人口がほぼ横ばいであることを考えると、鳥栖市が、物流関連施設も含めて積極的な誘致を試みたことが見て取れる。事実、九州全域を見渡す交通の要衝として、物流業界において“鳥栖”は確固たる地位を確立した。

余談ながら、一度、東京で開催された周辺自治体共同の誘致セミナーに出たことがあるが、「新幹線開業」を全面に押し出し、大阪から近くなると東京で訴えた久留米市と異なり、企業進出における実務的な要素をキチンと抑えていた印象がある。

具体的なことは一切言えないが、昔、とある企業から、九州における物流拠点を決める打ち合わせへの同席を求められたことがある。こうみえても、人一倍、郷土愛がある筆者としては、政治の面で果たせなかった地元への恩返しを・・・と内心思い、話を聞いてみた。これは、地元の地理要因を理解した人間の感覚だと思うが、確かに、九州の高速における主たるジャンクションは鳥栖だ。さりとて、物流センターを置くとなると、鳥栖と、その一つ隣のインターチェンジぐらいまでなら、そこまで大きな違いが出るワケではない。寧ろ、用地の確保、建設許可、稼動後の労働者確保などの実務面が重要となる。

と思い、内々に(非公式に)、地元の関心事を探ってみると、物流倉庫はね・・・というトーンの反応であった。無論、それは関心の有無を照会した人の個人的見解だったかもしれない。たまたま、ダイハツの工場が進出した・・・という時期の悪さもあったかもしれない。とはいえ、是非とも!というトーンでは明らかになかった。どこか、寂しくもあった。結果的に、その物流センターがどこに進出したか・・・という点は言及出来ないが、客観的にみても、確実に、その地域の雇用には繋がっていると筆者は思う。

物流施設は迷惑施設なのか?


  物流パーソンはあまり考える機会がないのかもしれないが、行政からの企業誘致、あるいは、拠点再配置などの相談を受ける立場でいえば、しばしば、残念な気持ちになることがある。寧ろ、「物流事業者を誘致して欲しい」との依頼を受けるケースを除けば、大半は、そうなのかもしれない。

端的にいえば、多くの自治体は、企業に進出して欲しいと思っているが、こと、物流関連施設になると、そうでもないことは結構ある。明確に、「あ・・・、物流ですか・・・」というリアクションを行政から受けることもある。時に、物流施設ばかり出来ても市民生活にプラスは無いとの声を耳にすることもある。

その度、「物流施設は迷惑施設なのか?」と、とても歯がゆい&寂しい気持ちになるが、「来て欲しい」と望まれない場所に進出することを無理強い出来ない。そこに物流施設を作る以上、最低でも、数十年は、その地域に根ざし、その地域に暮らす人たちの力を借りて、この国の社会生活を縁の下の力持ちとして支え続けることになる。そのためには、地域の理解、地域との共生は最優先事項だ。色々な思いをグッと堪えて、ただただ、来て欲しい・・・と思ってもらえるような地域を探すしかない。同時に、是非!と言ってもらえる業界へと変わり続けていかなければならない。

物流関連施設があれば、確かに、大型車の交通量は増え、騒音も増えるかもしれない。24時間365日稼働するCVS、あるいは、食品関連の物流センターならば、昼夜を問わない面もある。だから、物流拠点の立地選定をする際、近隣は勿論、ICなどとの経路において、通学路や病院などの施設、あるいは、住宅が無いことなどを入念にチェックする。物流関連施設を望まない人がいる限り、地域の皆さんが安心・安全に生活出来るように、最善の注意を払い続けなければならない。

冒頭、「特に主張は無い」と書いたが、どうか、政治や行政、地域を主導する経済人の皆様におかれては、製造業は海外に逃げても、その地域の生活を支える食品や日用雑貨などを取り扱う物流関連施設は、海外に逃げないこと・・・にご理解頂きたいし、決して、賞賛して欲しいなど、大それたことを求める気は無いが、そこに人が暮らす限り、昼夜を問わず、社会や人の暮らしを支える人たちがいること、そのような人たちが、毎日、毎日、愚直に取り組むからこそ、社会が成り立っていることに、少しだけ、思いを馳せてもらえたら幸いである。

 

●延嘉隆氏プロフィール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
株式会社ロジラテジー代表取締役。
物流企業経営の視点で、財務戦略(事業承継・M&A・企業再生)・マーケティング戦略を融合し、物流企業の価値を上げる物流コンサルティングファームとして評価が高い。
物流企業を中心に、事業承継・相続、物流子会社の売却など、“ロジスティクス”、“卸”、“小売”などの財務課題で、卓越した経験を有する一方で、物流現場に作業員として入り、作業スタッフとの対話に勤しむ一面も。延氏の詳しいプロフィールはコチラ。

*本連載に関するお断り