フジサンケイビジネスアイ(2)物流不動産ビジネスで価値を創出 
イーソーコグループ 会長 大谷 巌一
モノを預かる倉庫業と場所を賃貸する不動産業を、空間ビジネスとして融合させたのが物流不動産ビジネスだ。物流業のメリットである“守り”に、不動産業の“攻め”をプラスした。不動産業の観点からは、倉庫オーナーと入居テナントの双方のメリットを創出する提案を行う。そのニーズはさまざまだ。「働き方改革」の流れの中で、参入企業が増えている。
例えば、古くなった倉庫をオフィスや店舗、スタジオなどに改修する倉庫リノベーション。倉庫内で働く人たちのモチベーションを上げ、生産性を高める空間づくりやテナント紹介など、倉庫業の枠を超え、費用面も含めて建築や金融、不動産の領域まで提案する。
根底にあるのは倉庫業にまつわる困り事だ。ハード、ソフトともにベストな提案を行い、「物流最適化」を支援する。企業の物流戦略が重要視される現在、物流不動産ビジネスは各方面から引き合いが寄せられている。背景には法律改正や規制緩和がある。
トラック業界の貨物自動車運送事業法と貨物運送取扱事業法、いわゆる「物流二法」が1990年に施行された。区域トラック事業の免許区別を廃止するとともに、運賃が従来の認可制から事前届け出制に改められた。これにより参入規制が緩やかになり、一般貨物自動車運送事業者数は大幅に増加した。90年代後半には最低保有車両台数が段階的に削減され、新規参入事業者が一段と膨らんだ。
一方、バブル崩壊や景気の低迷、人口減少、製造業の海外シフトなどで国内輸送マーケットは低迷。事業者数が増えたトラック運送業者は、荷主に対して劣勢になっていった。
2001年には「倉庫業法」が一部改正された。許可制から登録制に移行し、規制業種、特権営業、地域独占の従来型スタイルが崩壊した。ファンド企業による超大型高機能物流施設の開発が始まったのもこの時期だ。EC(電子商取引)物流に対応するため、先進の物流施設が林立していく。
同じ01年には物流業を所轄する運輸省、不動産業を所轄する建設省が統合され、国土交通省が誕生した。これにより物流不動産ビジネスに対する理解が促進され、とくに統合後に入省したキャリアは前向きに捉えてくれている。
倉庫業の規制緩和で大きく変わったのは、業界特有の“待ちの営業”が通用しなくなったことだ。物流が「ロジスティクス」と呼ばれるようになり、モノの流れを一元管理することで速く、無駄のないプロセス実現が求められるようになった。原料から生産を経て消費者に届くまでのサプライチェーンという概念も浸透。受け身の営業から脱せず、指示を待つだけの物流会社は淘汰されつつある。
これからの物流業は、物流を繋ぎ役として他業種と連携し、新たな価値を創造することが重要だ。固定観念を捨てることと、自由闊達なアイデアが欠かせない。
本稿は産経新聞社発刊「フジサンケイビジネスアイ」のBizクリニックコーナーで、大谷が3か月間連載中のコラムです。