裁定取引 Arbitrage(第12回) 物流マネー70兆円のゆくえ
ビジネスは収益を求めて様々な活動を行うが、狙いはマネーである。マネーは3通りの方法でしか手に入れられない。盗む、交換する、貰うという至極単純な構造だ。
天然自然から盗むのは神からいただくことになるが、そのための努力は誰でもできるものだ。真似ができるからその価値は低くなる。第一次産業はそのようになっている。
自分の時間を労働に充てるなら交換していることになる。生きる時間、働く体力を作り出すために自由を放棄しているのが、労働者であろう。資本主義は資本と労働で成り立っていて、原材料に労働を加えて価値を高めているのが交換経済の始まりだ。第二次産業は交換によってマネーを獲得している。
さて、最後のマネーを貰う方法だが、無償で貰うには限界があり、奉仕や納得、感謝や知識などサービス産業や情報産業のように新しい価値が必要になる。
このように見てくると全ての産業やビジネスは、製造、流通、貿易、サービス、知財なども3つの手段でマネー獲得をしていることになる。
ところが世界中を視野に入れると、時差、地域差、為替、価値観、法令、税制などの国や地域、民族や文化の違いで「商品価値やサービスの価値」が異なることがある。
情報、知恵、想像力を源泉にしたビジネスが裁定取引
これを利用した交換経済を裁定取引と呼ぶのだ。アジアから日本への金塊密輸があとを絶たないのは、日本の消費税が高く、アジアは無税だからそれだけで8%のマージンが取れる、ただそれだけの理由で密輸者が頑張っている。製造業の原材料も輸入に頼るのは、為替や物価水準からみて割安だからであり、その価格差は情報力に他ならない。
情報力は金融に最も有利に働く
交換経済は原価がかかり、付加価値を生むための手間や時間を必要とする。しかし、金融裁定取引は情報だけだ。金利差、マネーの価値、不動産価格、不動産の収益力、実体経済での金融のポジション、様々な情報を判断すると100万円を最も有効活用できるのは日本の不動産であり、投資対収益バランスを考慮すると箱型建設物の物流センター投資が最も有利になっていることが、世界の賢者たちには分かっていたらしいのだ。
堅実で実直、勤労を厭わず、不労所得を蔑む傾向にあった日本人が見逃してきたのが物流不動産投資ビジネスであり、裁定取引のモデルだったことは改めて記憶に刻むべきことなのだ。
<イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房陵>