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国家戦略室と戦略会議 − 第3回 国家戦略会議と物流

 民主党への政権交代によって多くの新しい機関が誕生した。国家戦略室もその一つで我が国の内政と外交を、国家戦略というくくり方で建て直そうという意欲があった。
 民主党政権の内政は財政・経済問題が重要で、赤字国債の発行額がGNPに限りなく近づき、税収の倍額予算が当たり前の国家運営をいつまで続けられるかが焦点だった。
 ムダを無くせば予算は余る、という主張で事業仕分けが始まったが、ほとんど効果なく終わり、依然として公共投資や外郭団体への資金の流れは止まっていない。
 平成24年国会は『社会保障と税の一体改革』というテーマが大きく、経済や外交のウエイトが低い。消費税増税が出来レースのように固まりつつあるが、肝心の税収はGNP成長に左右される。景気が良くなれば税収は増えて、いらぬ心配がなくなるが、このままの平成不景気から脱却できなければ、どれほど税率を上げても、上げても、新税を創造しても、全く足りないどころか無間地獄に陥るだけだ。

 そこで期待の国家戦略会議が昨年秋から本格的に起動している。
 昨年6回、今年もすでに1回の国家戦略会議が開かれて、何となく我が国の進む道筋が見えようとしている。
 昨年の会議の結果、『日本再生の基本戦略』~危機の克服とフロンティアへの挑戦~前30ページが暮れに公開された。すでに英訳もされ、海外のエコノミストも注目している日本再生のシナリオだ。当然産業界や私たちの生活にも直結する青写真だから、関心も高いはず? それなのにマスコミメディアはあまり扱わない。
 もう民主党政権には目もくれないのか? それとも、具体性が乏しく、何がどうなるのかが分かりずらいからなのか、解説記事が極端に少ないのが気になる。

 誰もが従来通りの産業や企業の復活を期待している。景気が良くなるとは、昔の面影を偲ぶ思いなのだ。製造業や流通業がいつの日にか昨年実績を上回り、販売額が成長することを期待しているが、そのための条件となる総人口や労働人口、世帯数、購買額が増える兆しはどこにもない。じっと我慢していても、もう元の姿には戻れないところまで我が国は来ていることを直視しなければならないのだ。

 さて、日本の再生はどのようなシナリオで計画されているのか。そこにはビジネスの衰退とチャンスがどのように織り込まれているのかが、本来の関心事である。
 30ページの計画書を整理してみよう。
 内容は5つの項目に分かれている。

1.危機の現状
2.震災・原発事故からの復活
3.経済成長と財政健全化の両立
4.新成長戦略の実行加速と強化・再設計
5.新たなフロンティアへの挑戦
 簡単に言えば、平成大不況と東日本大震災影響、そしてマクロ指標である少子高齢化社会を踏まえて、膨らむ社会保障と税収を確保するためにはどんな産業転換が必要であるかを述べている。既存産業に再生復活のチャンスはあまりないだろうと、すでにさじを投げているのである。
 自動車・家電・住宅にエコ特典減税という国家的なバーゲンや中小企業向けに銀行債務繰り延べという過保護を続けてきたモノの、産業は復活せずに黒字化していない。さらには中小企業の延命措置そのものが、負担になって金融もしんどくなってきたというのが実態だからだ。
 そこで期待するというか、もうこの道しかないのが新産業への期待と助成のシナリオなのだ。
 新成長戦略計画で指名されている産業は、グリーン、ライフ、科学技術、情報通信、宇宙、ベンチャーとあって、自動車・家電・住宅・鉄鋼・化学ではないのだ。東北での土木建築は別としても、流通や小売りという消費財業界への期待はどこにも書かれていない。
 既存産業は劇的な事業改革と構造改造によって、車から人工衛星、家電から情報機器、鉄鋼から新素材、化学から医療医薬への転換を覚悟しなくてはならない時代に入りつつある。産業区分が変わり、業界のくくり方までも変わるはずなのだ。
 小売り流通は従来のような、大型店舗や増床による顧客誘導ではなく、中高齢化した街での直販や訪問販売、通販、ご用聞き、街ごとのイチバ作りへ転換しなくてはならない、と裏読みできるのがこの資料なのだ。

 さて、物流はどうなるか? すでに荷主ごとの物量は減りつつあり、いたって元気なのが通販物流であろう。顧客層もニューファミリーからミドルエイジへシフトが始まり、世帯数こそ変わらないが、実態としては単身世帯が3割を越えてきた。ティーンエイジャーからアラウンド30、40がカタログショップの主流になりつつある。
 ●車、食品、ファッション、家具業界は単身世帯向けに変われるか?
 ●ヤングからミドル向けにデザインや仕様、価格や宣伝手法を変えられるか?
 ●通販のカタログは老眼鏡なしでも読めるようになっているか?
 ●痩せる・惚けない・きれいになる、以上のヒットキーワードを生み出せるか?
国家戦略とあなたの仕事は、こうやってつながっているのである。

(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント 花房 陵)