物流業界はどうやってキャッチアップできるか − 第9回 新経済成長戦略と物流不動産
景気の低迷を後解釈して道が開けるモノでなく、単純な対策を講じてもGNPが急激に伸びるわけではない。いつしか先進30カ国の中で20位まで下がってしまった我が国の国際競争力を直視しなければ、次の手が見つからないはずだ。
消費大国ではあるものの一人当たり付加価値というか、給料が減っていくから若い人の無駄遣いと年寄りの高額品に頼っているのが現在の流通業。
だから成長が止まり、前年割れが元に戻らない。戻すには扱う商品を変えて、衣食住から道楽医療娯楽福祉のサービスを扱うことを視野に入れる必要が ある。これを産業の転換と呼び、小売業からサービス業への業際越えと言うのである。衣食足りて礼節を知る、ではないが、今なら衣食より健康医療産業であろ う。
農林水産第1次産業にも可能性はまだ残されている。季節と天然を相手にしている不遇の産業と言われてきたが、高層ビル内に野菜工場が誕生し、冷凍 技術が旬をタイムマシンに乗せるまで来ている。いつでも収穫できる新鮮野菜と特別な冷凍技術で、解凍すれば生に戻る「CAS冷凍」が第1次産業の救世主に なっている。
2次、3次産業をITシステムと物流がサポートすれば、収穫地域と消費者を直結する6次産業が誕生し、それこそが産業革命となる可能性を秘めている。産直通販も趣味趣向からもう一ひねりすれば新業界化が可能だろう。それは健康医療へのキーワード発見だ。
日本を去ってアジアに向かうのも結構、昭和初期には我が先人達はアジア各国を大アジア圏として、歩き回っていた。欧米の植民地政策の横暴さに余るものがあったからだ。脱亜入欧の逆を目指すために、アジアの現実を見てきたのだ。
その延長には戦争があったが、政治決着の手段と外交戦術の打ち手が足りなかったと言えるだろう。
日本の技術をほどほどに利用した、販売価格に見合う商品開発は世界にはニーズもウォンツもある。大陸は5つもあり、10億人20億人がまだ発展途 上の幸福の門をくぐろうとしている。大量消費への単純な道のりは環境と資源問題を引き起こすから、省エネ技術と代替エネルギーとの天秤を操作しながらの、 経済発展を進める必要がある。
南北問題を南北商圏と見ることにより、低価格故の低成長だけれども物づくり、流通構造、技術の進歩を世界の幸福のために使う路はしっかりと描かれている。
世界をITと物流手段でつなぐノウハウがあれば、日本の物量低下は世界の物量増加と合算できるし、24時間の時差も瞬時に越えてゆくITが手元にある。
政治に頼り、期待もしたい気持ちもわかるが、地球を空から見ていれば日本という局地では、成長も止まり、一人当たりの幸福も成熟し、強烈な市場拡 大の方法はもう遺されていない。正義を通して後生にも誇れる国造りとサステナブルという継続を目指すなら、労働者一人当たりの幸福なり、付加価値を目標と した事業経営を目指すしかないだろう。雇用がないのは市場が足りないからで、若者こそアジアや世界に飛び出すチャンスである。
一月分の小遣いだけでアジアや世界は巡ることができるようになっており、日本の役割を見つけるには空から眺めるのが必要だからだ。
ITと物流で世界を結ぶ、これこそが若人に気付いて欲しい新産業なのだ。
(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント・花房陵)