インフラエネルギー産業と物流 − 第3回 新経済成長戦略と物流不動産
参議院選挙をみていると、各政党のアピールは総花的で実現可能性に乏しい様子がすぐ分かる。参議院は影響力も少なく解散もない から指導力を発揮できない。奇しくもカナダG20で日本経済の低落振りを指摘され、同時に財政回復の出遅れさえ許されるほどの体たらくが判明した。まぁこ れは首相の指導力でも何でもないが、わが国の実態が世界に知らされた画期的な会議でもあった。税収が少なく、財政赤字が大きく、世界への影響力がほとんど なくなったという認識が広まる突き上げ会議のようであった。
新しい産業の創造によって潜在的失業率900万人の受け皿にするには無理があるが、失われた20年を取り戻して景気回復を目指すには縮小均衡の方法しかない。一人当たり付加価値と所得の確保によって、税収と新しい幸福感を示さねばならないからだ。
エコポイントや減免税でしか独り立ちできない自動車、家電、住宅産業から韓国・中国勢とも競争を避ける新しい旗印を探さねばならない。それが新成長戦略産業と呼ぶ業種なのだ。
インフラ関連業種では具体的に水、石炭火力発電、送配電、原子力、鉄道、リサイクル、宇宙産業などを指す。これらの業界を国際競争力強化のためにさまざまな行政支援と外交通商を通じて育成してゆこうというのが始まりである。
従来までもインフラ関連は大手企業が手がけてきた。しかし、今後はアジア全域の外需をわが国の内需と見なしてゆくためには、製造販売=輸出ではな い。プラントや機材の販売ではなく、装置産業そのものをアジアに移動させてゆくことなのだ。これを産業のソリューションビジネス化と呼ぶ。
カタカナ産業の代名詞であったIT業界は、すでにハードソフト、要員の派遣というパーツビジネスから、クラウドコンピューティングという利便性の サービス事業に転換を始めている。古くはゼロックスというコピー、プリンターマシンの販売事業から機材の据付け、要員の貼り付けによる印刷事業部の請負 サービスに転換して機材販売からソリューションサービス、ビジネスプロセスプロバイダーと呼ぶようになった。
「製品の販売ではなくソリューションビジネスに物流が必要か?」素朴な質問には物流の持っている総合請負に欠かせない機能の発揮だと考えれば良いだろう。
プラントや機材の据付による物流とは種類が変わってくる。自らが出荷指示を行い、自らの覚悟で在庫を調達し、プラントや機材の安定運用のためにすべての部材や消耗品、サービスパーツのサプライチェーンを実行することになる。
物流が自らの意思を持ち、自らの自己自立性によった物流活動を行うことになる。
機材のサービスパーツの物流とは何か。これこそが頭脳を持った物流活動といえるであろう。指示を待つのではなく、誰からの後方支援でもなく、自らの存在を掛けて必要な素材、製品、部材、そして交換廃棄処分までを一連の流れとして提供してこそ存在が維持できる。
(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント・花房陵)