ジェロントロジー gerontology (第39回) 物流マネー70兆円のゆくえ
ジェロントロジーとは老齢学ともいうべき、超高齢社会となった日本のこれからを解くための必須知識と言える。高齢化社会とあちこちで呼ばれるようになってはいるが、世界保健機構(WHO)によれば、正確な定義が示されている。
65歳以上の高齢者の人工に占める割合が
7%〜14%までを高齢化社会、
15%〜21%を高齢社会、
22%以上を超高齢社会
と呼んで区分している。
その基準に従うと日本はすでに完全な超高齢社会に突入している。世界で唯一最初の経験国家として、未知の世界に足を踏み込んだといえるのだ。
時代の変化は徐々に、かすかに進行するので観察を細かくしてゆかないと気づかないことが多く、振返り振り返る度に気づくことがほとんどなのだ。
労働人口の減少は国民経済の総産出量の低下を招き、消費行動は人口とその国の平均年齢によって変化する。高齢化と人口減少は、労働力と消費力の供給と需要の双方で低下、減少をもたらすことになる。我が国は昭和の戦争を経て、長きに渡って人口増加を追い風に高度経済成長を遂げてきた。人口増加による単純な需要増加を<人口ボーナス>、人口減少による需要減少を<人口オーナス>と呼ぶ。
人口オーナスの経験が全く無かった我が国にとって、どのようなマーケットも縮小してゆくのが明らかとなり、すべての産業における生産量や消費額は人口減少と連動して縮小してゆく(逆相で増加するのが医療や社会保険関係の支出であり、その波及効果の対比検証も必要ではある)。
人口減少は地方都市ほど急激に進み、自治体の運営すら危うくなってきている。(税収と職員、警察消防などの公務員不足、児童減少による学校の閉鎖)、地方と産業の疲弊は国家運営にまで及ぶ。
我が国の経済活動の最大セクターは家計であり、家計消費が300兆円を占めている。ここが弱含みになれば国家経営にも支障が出ることだろう。消費増税が効力を失うのも明らかなのだ。このように我が国にとってのはじめての経験は、暗闇に行く手を阻まれるに等しい。高齢化社会の予測と警告は随分前からさんざん発信されては来ているが、実のところの対処法や備えというものがまだ見当たらない。
改めて課題を明らかにして、対象法を探る必要があるのだ。そこに物流の視点が必要なことは言うまでもない。
<イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房陵>