変わる教育業界 その1 − 第24回 大きく変わる業種・産業界
地方都市のベットタウン駅前は、昔は居酒屋今は予備校と学習塾がテナントの多数を占めています。教育というと、進学塾補習塾個別指導の事を連想し ますが、事実上大きな産業に育っています。90年台、高校受験のための実績追跡と偏差値というしくみで中学校では3年制になると、毎月授業時間内にアチー ブメント(学習到達度)調査が行われていました。時の文部鳩山大臣が、偏差値は差別であるとの見解から一斉に中止されました。
では教育の集大成である大学進学率はどうか、というとOECD30カ国の中でも未だに中央付近、下位沿いにあって51%しかありません。なぜっ?て言うのが問題です。
その後、曲折を経て再びテストは産業になりました。日本の学歴社会、良い大学に進めたい、そのためには中学、小学校、幼稚園からという「教育ママ」の再登場です。
お受験ブームはテレビ番組にもなったし、その熱心さは日本だけに限らず、アジア全員域でのビジネスモデルになっています。公文教育会はすでにアジア各国に「JUDO」と同じ規模で広まりつつあります。
同じように生涯教育や英会話ブームも連綿と続いていて、英語学校、通信教材ユーキャン、ベネッセなどの躍進が目を見はります。
今やタレント化した林先生の『イマでしょ!』は、東進予備校での衛星動画配信授業でトップクラスだそうです。
大学入学時期を諸外国と合わせて9月にしよう、日本の大学教育のレベルアップを図ろう、進学率を高めよう、高校学校までの授業料を無償化しよう、テストは偏差値でなくて学力調査として全国統一で行う、などと様々な政策が打ち出されています。
大きく分けて義務教育と大学、そして私学や学習塾、英語学校や生涯教育関係で見ると、家計消費の中でも大きなウェイトを占めるようになりました。教育と いえば教科書や教材という印刷物、駅前などの不動産物件としての学校、講師や先生の人数規模、衛星予備校に代表されるe-ラーニングシステム、そしてイン ターネット技術開発。コンテンツ開発。裾野として大きな産業や雇用を維持するマーケットなのです。
特に、小中学校の無償教科書では制作と配送で5~600億円の予算が文科省で取られています。主に印刷と物流です。ここ10年間、全国学力調査という統一テストが小中学校で行われていますが、その事業予算は60億円を越えます。
予備校、学習塾などは上場公開企業も登場していますし、公文に代表される海外進出も勢いがあります。
いずれも、印刷、指導者雇用、物流、情報システム、教室物件、などの固定費主体の産業であることに注目です。
製造流通のように、原材料や仕入れなどの変動費ビジネスとは性格が異なることの意味が大きいのです。
ある一定の規模まで固定費ビジネスは不安要素が大きいのですが、規模の経済性や安定化が図れると減価償却だけの構造となり、収益力が格段にアップします。確かに、印刷費や指導者の雇用は従量性ですけれども、その他の産業とは指標が変わります。
成長戦略では、何となく日本の知力、コンテンツ産業に弱気のように写っていますが、実は競争力の安定した産業になっていることに気づく必要があるのです。
(花房 陵 イーソーコ総合研究所主席コンサルタント)