物流組織に活路あり insourcing(第31回) 物流マネー70兆円のゆくえ
物流コストは多い順に輸送費、作業人件費、保管倉庫料、システム消耗品に分かれる。およそ、60:25:10:5 という比率になるだろう。年間コスト10億円なら人件費は2億5000万円という額だろう。これは物流業界における最大の付加価値要素であり、賃金が消費に向かうように大きな波及効果がある。輸送費や倉庫保管料にも波及効果は無いわけではないが、燃料費や設備保守費用などの変動費が大半を占めており、収支には余裕は少なく、ギリギリになっている。
製造業や流通業の限界利益(粗利益)は40%相当であるから、それに比べれば物流事業の粗利益は極端に少ないと言える。ただし、作業人件費は時間労働力の費用だからどれほどの生産性、売上をもたらすかによって限界利益は大きく変わる。
作業労働性とは、時間あたりの売上や処理能力を示しているが、人は固有の働き方をするものだ。それは、経験と意欲によって働き方は同じ時間でも大きく異なる。いわば、条件次第では多くの仕事をなすものだ。
人の働き方は、次の要素で決まる。
1:学習の機会が多いこと
2:定められた手順やプロセスが合理的(標準化)
3:管理者が関心を持って見守っていること
それぞれには働く動機を高める要素が含まれていることに気づいて欲しい。
もっとも避けなければならないのは、物流活動は多くの作業の連続で出来上がっているからとして、単純作業の連続に陥っている職場である。人はマシンではないので単純繰り返し作業には適していない、むしろ工夫の余地や手の動かし方に個性を出せるような作業を推奨しなくてはならないのだ。
これらは外部契約によるアウトソーシングでは気づかない視点であろう。何より業務の継続は経験の蓄積であり、それらが生産性の向上につながらなければ賃金や料金の改定に向かわない。料金は能力であり、アウトプット次第だから契約で決まるわけではないのだ。
物流ビジネスが盛んであり、アウトソーシング当然と考えられて来てはいるが、実態としての労働環境や作業の付加価値向上にはまったく関心がなかったのではないか。
人が労働時間コストだけで見るなら、それはマシン同様であり、人の働く動機にはなり得ない。コストはその機能と性能によって評価されるべきであり、物流活動や作業であってもこの差は大きいはずだ。アウトソーシングからインソーシングへ、生産性向上改革は人の働く環境づくりにある。
<イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房陵>