物流の設計(トータルコストアプローチ)− 第4回 再び学ぶ物流不動産
従来の物流施設に比べて、大型倉庫や物流施設はどのような評価を受けているのかを整理してみましょう。
最新の物流センターは単に巨大で新機能というだけでなく、運用面での物流コスト効果でも極めてインパクトのあることが分かります。
物流コストの大半を占めるのは輸送費ですから、輸送の距離や運行時間、積み下ろしなどの時間を考慮することが最重要となります。輸送原価の多くはドライバーの人件費=拘束時間になっています。
巨大物流センターは多層階構造が多く、大半はトラックが上層階へ直接入場できるようになっています。また、入荷口と出荷口を別に分けているものもあって、入出荷トラックの時間短縮に効果的であることが分かります。
通常の多層階倉庫では、1階で荷受を行い庫内エレベータで搬送を行いますが、ワンフロアで構成されている新型倉庫では到着から棚入れまでの時間短 縮効果がかなりあると思います。このように輸送効果、時短効果というのが、最新の物流センターの特徴です。さらにレイアウト設計においても、搬送機やエレ ベータが不要のために広々とした空間は、坪当たり保管効率の高さも実現できています。従業員のための食堂や休憩室など、施設が大型化しているために共有設 備の負担も下がって、魅力的な施設を装備しているのも特徴です。
このように新型大型物流施設は、巨額な設備投資を行って極めて特殊な位置づけにあると思われがちですが、実際の運用面では要員確保、輸送時間の短縮、保管効率の最大追求の機能面では非常に効率の高い設計がなされていることが分かります。
分譲や賃貸借で提供される物流施設では、坪単価賃料だけで比較されることが多く、その点では近隣の旧来型施設との料金格差が大きいように感じられることもあり、とっつきにくい面もあるようです。
物流施設を選択する際には、これらの表面的な料金比較だけではなく、実運用に際しての総合的なコスト比較を行うことが重要です。
ちなみに私たちの試算では、新旧物流施設の坪単価の格差は運用面での費用を総合的に見た場合、圧倒的な優位性を確保していることがさまざまな事例で検証されています。
物流不動産をビジネスにしている企業では、このような大型施設のコストパフォーマンスを総合的な評価によって行うことが重要といえるでしょう。
次回は、物流施設の営業活動におけるアプローチの取り組みについて紹介しましょう。
イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント・花房陵