倉庫が社会への貢献と考える人 − 第3回 物流不動産のにぎやかな人たち
「所詮この世は欲と二人連れ」西鶴は人情夜話で何度も繰り返します。CSRとかコンプライアンスとかの呼び声は上がっても、企業人たるサラリーマンが現役時代に社会と会社を天秤に掛けることはできません。何より自分の業績が最重要で、社是にある「社会貢献」は二の次になってしまうのは仕方のないこと。難しいところです。
イーソーコ前身のアバンセロジスティック社長中村さんは、日本通運OBの方で現場の叩き上げだから退職後も物流の仕事が懐かしかった。普段から後輩を訪ねては仕事の相談に乗り、営業案件や倉庫物件の紹介に骨を惜しみませんでした。報酬は知れたもの、まさに後輩のため、第2の人生を社会貢献や慣れ親しんだ畑の香りを楽しむような仕事ぶりでした。
大谷が東京倉庫運輸営業課長と物流不動産ビジネスを立ち上げようと2枚看板でどっちつかずの揺れ動いている時に出会ったのが中村さんです。「事業を立ち上げるには代表者が必要」と口説かれて、新しいビジネスモデルになるかも知れないと直感した中村さんは二つ返事で社長になったのでした。
社長は決まった、計画の遂行を着実に行うには物件図の整理や契約書の準備、倉庫会社さんや不動産会社との交渉記録もきちんと取り付けなくてはならない、事務方の専門職が必要になったのは間もないことで、稀代の美女がスカウトされました。前後してイーソーコの現社長、遠藤女史でした。業界出身ではなかったので、当初の苦労は如何ばかりのものか。右も左も符丁も専門用語ばかりで、本当に苦労したのでしょう。
インターネットと携帯電話の使い方もままならぬウチにアバンセロジスティックがスタートしたのでした。欲も勝算もほとんど無く、いざとなったら親会社に復帰するとか、また元の道に戻るつもりで始めた本質は、「この業界に新風を吹き込みたい、新しい価値観を生み出したい」という公欲だったのかも知れません。
(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント・花房陵)