<消費税導入の意味>55年体制を振り返る − 第1回 政治と物流不動産『政権交代で何が変わるか』
もっぱらの話題である政権交代の意味や意義を改めて、実体経済を支える物流から考えてみたい。とはいえ、政治と物流とは規制が撤廃された現在、勘当された放蕩息子のように恨みばかりが募ってくる昨今である。
政治とは国家の安定と国民の幸福を守るための活動であり、担当省庁による年度別の白書、及び外交青書に示されている。具体的には未だにふらついて いる新年度予算案によって、政権の目指している姿が見えてくるはずだ。先月終了した事業仕分けでは、新年度予算案を上げ下げしながら無駄の排除を図ってき たが、その実成果は少なくて財源の不足を取りざたしているのは困ったものである。
自民党政権は1955年、昭和30年からの高度経済成長に支えられ国よりも民間の活力が国そのものを牽引してきた。55年体制とは何かを述べることはできないが、筆者の記憶に残るトピックスを振り返ってみたい。
政治は税制と予算に代表される巨大な国家機関である。国は外交と防衛により国体を守り、税制によって産業と国民の福祉を高めてきている。我が国が 奇跡的な経済成長を遂げた後、世界各国との国際競争力を高めるためには新税の導入が不可欠とされた。各国ですでに導入されている付加価値税、VAT、消費 税である。1989年、国民の同意を得られたかどうかは思い出せないが、3%の消費税が始まり、国家財政に大きな貢献を果たした。気づかなかったのは同時 期に法人減税が行われたことである。法人税は当時、GNP対比で4%相当の財源となっていた。税の多寡を言うなら少ない方が良いに決まっており、所得税も 贈与税も常に政権を掛けた意気込みで議論に上がる。
GNP対比4%という法人税収は、国家の経営原資がその多くを企業活動に依存していることの証明である。・・・・・・法人税率38%は段階的に下 げられ、現在は国税としては30%、2007年現在ではGNP対比2%まで下がってきている。つまり、家計消費300兆円の5%相当が消費税であり、15 兆円が税収となっているから、国家を支えているのは国民の消費に代わってきていることを忘れてはならない。
なぜ、消費税と法人減税がトレードされてきているのか。それは深い謎でもあり、企業活動の活性化のために選択された究極の政策であったのかもしれ ない。同じように国税年度決算報告書2007年を見ていると不思議な事実にぶち当たり、思考が停止する。内国法人数は280万社であり、黒字申告を行って いる企業数は83万社、30%を下回る。法人税収は14兆円であるが、300社の存在が気に掛かる。
それは、連結対象法人のことであり、いわば上場資格のある大企業のことである。黒字申告を行う数は200社であり、その税額は2兆円に満たない。
連結企業は関連会社を数百も従えており、損益通算が可能となっている。つまり大企業ほど、節税対策が取りやすく、中小は資金借入や銀行取引のために泣けなしの黒字申告と納税を行っているのだ。
消費税累積額は法人減税累積額と揃い、まるで取引が成立しているようである。政治とは気づかぬうちに様々な事柄がマスコミや論調の裏側で行われていることに唖然としなくてはならない。
実体経済を支える物流と同じように、政治もまた表舞台とは別の姿を持ているのであることに、改めて気付かされた55年体制ではあるのだ。
(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント・花房陵)