不動産業界の戦略 − 第6回 物流不動産不況と戦略
不動産業界にも不況が及び資金枯渇、所有不動産という在庫過剰によって資金繰りが厳しくなっています。不動産価格の下落予想が外れ、リスクマネジメントが効果を失ったとたんに業界全体が沈没しそうな状況です。
株式や債券などの金融商品と同様に、不動産は景気の先行指標として見られてきました。実際にも景気回復期には先行して地価が上昇していました。住宅やオフィス賃料などの分かりやすい相場が私たちの目に触れるとき、これから景気がどうなってゆくのかをガイドしてくれていました。
そのためにも不動産業界は各国の経済指標を敏感に反応して、土地の入札や手当に必死となっていました。不動産事業法にも転機が訪れていて、流動化とか証券化と呼ばれる手法により自己リスク以外の方法によって不動産のビジネス化が進んできているのです。
自己資金以上の調達選択肢が増え、また証券化という分散資本の集合が金主となったために不動産投資のリスクセンスが下がってきました。というのは失言かも知れません。本来自己投資だけが許された事業であったために、不動産経営は先見性の能力によって業績が左右されていました。景気動向に対して逆張り先方しか勝利の秘訣はなかったからです。
もう一つ不動産事業の経営戦略には商談の確率をどのように読んでいるか、という科学性も重要な要素でした。たとえば、街の不動産屋が取り組んでいるような低確率の商談を前提としたような閑散営業、「千三つ」と揶揄されるような待ちの営業、風車のようにチャンスをひたすら待っている事業の形態が多い中で、競争優位をどのように確保するのか。商談成約率を高めるために、超長期間にわたる顧客管理の徹底が勝算を確保したのです。事業用であれ住居用であれ、数十年のサイクルでは確実に不動産ニーズが変わり、再取得や転売イベントが確実に訪れるのです。これを商機につなげることが出来るかどうか、記憶が薄れるような顧客管理の手法に圧倒的な差が現れていました。
景気の先行指標、未来の確実な商談、待ちの営業からの転換、顧客のサービスと管理のために付随事業化への関心、これらが不動産事業の成功法と呼ばれるものでした。景気理由にしては何事も為しえないことを覚えるべきでしょう。
(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント・花房陵)