顧客非満足ー第12回 物流不動産&EC物流の解決力
最近は顧客満足経営という言葉を聞かなくなった。むしろ、従業員満足(Employee satisfaction)という人手不足対策の方が多いかもしれない。会社は誰のために存続するのか、組織のコストは誰が負担しているのか、事業継続のために欠かせないものは何か、様々な問いに対して顧客と従業員は共に最重要の要素である。
どちらを重視するべきなのかは、経営の本質に関わることであるが、企業や組織を維持するためにはコストが必要であり、その源泉は企業内蓄積ではなく外部からの取り入れ、すなわち売上や収益であるから顧客満足を重視するのが順当であろう。そこで、満足の反対語を考えてみる。
それは、不満ではなく、「満足していない」顧客層の存在だ。「どうでも良い、仕方なく取引を続けている、たまたまの縁である」、というような顧客層はかなりの割合で存在している。
顧客の不満ではなく、顧客は非満足というべきであろう。
非満足顧客は危うい存在である。目立つような大きな売上をもたらすわけではなく、いわば「その他大勢、サイレントマジョリティ」とでも呼ぶべきものだ。そこに焦点を当てることが、一体どんな意味をもたらすものかを考察してみよう。
すべての産業では、商品分析、顧客分析を行い、更なる売上追求、利益確保のために多くの施策を取り続けているはずだ。新商品投入であり、顧客アンケート調査によるサービス開発だ。しかし、非満足客はここには登場しない。アンケートには回答しないし、新商品に飛びつくこともない。営業活動の陰に隠れて目立つ動きもしない。そして、気づかぬうちに消えてゆく。取引を縮小してゆくのだ。
なぜ非満足を感じているのかに思いを至らせれば気づくことだが、振り向かれていない寂しさを感じているに違いない。さりとて八方美人的な営業活動を嫌うことも確かである。物言わぬ大衆とは、期待を失った存在なのだ。当てにしていない、気にしていない、強い要望や願望を明らかにしない顧客層が大量に存在していることに気づくと、そこには宝の山があることに気づくだろう。
従来のサービスレベル、商品群、価格帯、効用や用途を限らない全く別の使い道を当社と共にしていることに気づくとき、非満足顧客は不満客になるかもしれず、大得意層に変身するかもしれないのだ。その手法では、大きなコストをかけた営業展開を行うことができない。しかし、ECと物流サービスはコスト無用の作戦が可能になる。受注の窓口を広げ、商品への口コミを集め、クレームや改良意見を集めることで新商品の研究が開始できる。
それがもたらすものは、まさに非満足客へのアプローチとなるのだ。
イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房 陵