物流不動産ニュース

物流、物流不動産、倉庫を網羅した
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物流不動産の歴史-2 

(一)インターネットによる空き情報

  「物流不動産の寵児」イー倉庫の登場

 物流不動産ビジネスの代表的なビジネスモデルにインターネットによる空き倉庫情報サイト「イー倉庫」がある。
 イー倉庫の情報ネットは膨大な情報量とさまざまな物流、不動産のネットワークを備えている。
 また物流施設にかんする豊富な情報、データなどをもとに、物流施設の査定業務、流動化に関するコンサルティング、アドバイス、物流施設のデザイン、物流マーケティングに関する市場調査なども開始している。さらにいえば関連の「イー倉庫プロネット」を中軸に物流ファンド事業にも着手しようとしている。
 イー倉庫の中核となるのは倉庫物流関連事業の総合コンサルティング会社、アバンセロジスティックである。
 同社はこれまで物流施設物件の詳解とそれに伴うサプライチェーンマネジメント(SCM)
構築や業際的な物流アライアンス(戦略的提携)などについての企画、提案を積極的に推進してきた。
 同社社長の遠藤文氏は「ウィンーウィンの関係」を一歩進めた「トリプルウィン」を企業理念に掲げている。自社のみならずユーザー企業やその先にある顧客企業も含めてのメリット享受が目標というわけである。
 アバンセロジスティックは倉庫検索サイト「イー倉庫・ドット・コム」を首都圏で展開したのちに〇二年夏より全国ネットに拡張。倉庫会社、運送会社など一〇社の空き倉庫情報をサブドメイン方式でリンクさせインターネットを介して登録する方式を導入した。イー倉庫のネットワークには東京倉庫運輸、拓洋、秋元運輸などが加入し、人材、技術の共有か等も進められた。
 さらにアバンセロジスティックを含めた中堅物流企業集団により、”イー倉庫事業の司令塔”として、「共同組合物流情報ネット・イー」(大谷巌一理事長)が設立された。同組合には倉庫業の秋元運輸倉庫、拓洋、東運開発、運送業の丸新運輸、舘林運輸、倉庫不動産業・物流コンサルティング業のアバンセロジスティックなどが参加したのだ。
 イー倉庫には倉庫の移転先を探したい荷主や不動産企業が希望する物件を登録できる検索システム「イー倉庫ナビ」がある。しかも倉庫会社、運送会社だけではなく不動産会社などとの業際ネットワークも構築されている。
 また、倉庫移転などに伴う引越貨物の取次ぎサービスもある。倉庫情報システムと運送会社と不動産会社の引越貨物取り次ぎシステムをリンク。物流企業などの倉庫の移転などに伴う一連の流れを円滑にし、利用者に提供している。
 さらにトラック業界の荷物仲介サイト「トラボックスネット」を運営する求荷求車システム大手虎ボックスとも連携。
全国のトラック運送会社への倉庫情報の無料提供を行っている。トラボックスは大阪商工会議所(会員企業三十五万社)の電子商取引ネットと業務提携を結んでいる。

 〇三年二月には在宅/不動産総合情報サイトの運営のアドバークと提携。イー倉庫にエリア別賃貸料の相場を掲載するサービスも始めている。各エリアに強い倉庫会社が中心となって掲載物件の希望賃料と該当地域での三ヶ月以内の成約賃料から相場が算定され、エリア別賃貸料が掲載されている。全体相場に加えて、平屋か多階層建てかなど、詳細な物流施設の条件も定時されている。ちなみにアドパークが手がける「ホームアドパーク」は一〇〇万件の物件と五三〇〇社と不動産会社の参加する日本最大の不動産情報サイトである。

物流不動産ビジネスの誕生

 イー倉庫の登場は物流業界全体に大きな衝撃をあたえた。

イー倉庫の登場以前には、倉庫の空き物件情報を迅速に入手できる手段はほとんど存在しなかった。
 そのため、荷主の要望する地理的ロケーションに適当な大きさの倉庫をあてがうのは容易ではなかった。
 ところがイー倉庫の登場でそうした状況は一変した。
 地理的ロケーション、規模、賃貸料など、希望する条件を満たすウエアハウスはイー倉庫のネットワークで簡単に見つけることができるようになったからだ。
 〇二年夏の全国展開開始からわずか一年程で、イー倉庫はさまざまな関連分野のネットワークと提携しながらさなる拡張を遂げていった。

 物流不動産ビジネスの定義

 〇三年四月、産業提携の物流研究会「実施ロジスティクス研究会」の定例研究会で共同組合物流情報ネット・イーの理事長、大谷巌一氏は「倉庫業界不況からの脱出策はあるのか」というテーマで講演。イー倉庫による新ビジネスモデル「物流不動産流通ビジネス」について解説した。これは現在の「物流不動産流通ビジネス」について解説した。これは現在の「物流不動産ビジネスの骨格の紹介とでもいうべきものとなった。同定例研究会には一五〇人以上の物流企業幹部などが参加。大谷氏の話はそれまでイー倉庫について知らなかった物流関係者にも大きな衝撃を与えた。
 大谷氏は物流不動産ビジネスを「最適な物流環境を実現物件を提供し、提案する物流ソリューションビジネス|と定義。同時に「物流業と不動産業の融和」の必要性を力説した。
 SCMの普及や中国への工場シフトなどの影響で国内の倉庫需要は小さくなると考えられてきた。だがマクロで見れば確かにそうだろうが新しく使いやすい倉庫にかんしてはそうではないようだ。むしろより先進的な倉庫については多くの企業が必要としているといえよう。
 実際、在庫圧縮を視野に入れ、より大きな統合倉庫をユーザー企業は希望し始めている。
 さらにいえば、消費地に近く配送コストダウンの図れるような立場の倉庫に対する需要はたいへん高い。ユーザー企業は物流のトータルコスト低減を最終目標としているので輸送費が下げられる倉庫ならば倉庫料金だけにこだわる必要はないのである。
 「倉庫業会の現状は空きスペースの統計は営業倉庫だけで貸し倉庫についての統計はない。ウエアハウスの需給のバランスをこれまでは正しく把握できなかった。だがこれからはイー倉庫の空き倉庫情報を活用すればウエアハウスを戦略的に活用できるようになる」—。イー倉庫の最大のアピールポイントを要約するとこういうことになるかもしれない。

 倉庫情報を起点にしての物流改革

 イー倉庫は営業倉庫以外の空き倉庫情報の有効活用も図り、それを物流合理化へのステップとする方向を探り始めている。既存の求庫システムとは異なり、賃貸倉庫や物流不動産に特化したサイトも新設した。「たんなる倉庫物件の斡旋ではなく、ユーザー企業に最適な倉庫物件を提案し、それを仲介することによって物流ソリューションを提供する」という方向性を鮮明に打ち出しているわけである。ロジスティクス事業に取り組む企業にとって、物流施設の立地や機能に熟知することは不可欠。だがそうした物流施設に関する広義なビジネスノウハウを体系的にまとめながら提案するという試みはこれまで全く行われていなかった。
 「イー倉庫とは自然発生的に生まれたアメーバのような組織。倉庫会社のみならず、情報システム会社、求荷求車システム会社等を対等なかたちで取り組むことで大きくなってきた」—。大谷氏はイー倉庫の急成長ぶりについてしばしばこのように語っている。
 ネット書店大手「アマゾン・ドット・コム」の創業者ジェフ・ベゾスはあらゆる書籍についての情報を網羅することによって巨大なネット書店を構築していった。そしてイー倉庫もまた、あらゆる倉庫情報を自らのサイトに収れんしつつあるように見受けられる。