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【集中連載】アスクル火災を追う(5)倉庫内<管理者>の役割 

アスクル火災を踏まえ、国土交通省と消防庁は計4回の検討会を催し、その報告書が6月30日に公表された。提言の中でも言及されているが、検討会の中で最も時間が割かれたのが「防火シャッターの確実な作動に関する対策」だった。その対策として国交省は、倉庫事業者による自主的な責任者を立て、倉庫火災への防止する策を打ち出した。自主的な維持管理として、ガイドラインに盛り込まれることが予想される。

主要幹線に直結、設置されていたアナログ式感知器の周囲でショートが発生。多数の防火シャッターが正常に起動しなかった「現象」の発生について、部分加熱実験、耐火炉実験の耐熱性実験の結果、ショートにより、系統全体の伝送線の機能が喪失したことが原因とした。

そこで今後のキーワードとなるのが耐火対策だ。結線部付近の導線を耐火テープで保護した場合や貫通孔を耐火パテで塞いだ場合は30分間異常が発生しなかったという。また耐火電線を利用することにより、電線の補強や貫通部処理を施さなくても、有効にショートを防止できることが確かめられている。
 
報告書では(1)可燃物量が大きい、(2)防火区画として固定の壁ではなく、随時閉鎖式の防火シャッターが用いられる場合が多い、(3)スプリンクラー設備が設置されていない――ことから、大規模倉庫における火災の危険性を明かす。

ところが、延床面積5万㎡以上の大規模な倉庫火災は、この5年間に16件発生している一方、防火シャッター不備による火災拡大の報告はない。今回の火災が今後への大きなケーススタディとなったことの表れだ。

出典・埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた防火対策及び消防活動のあり方に関する検討会報告書

報告書では「大規模倉庫についてコンベヤや物品による閉鎖障害を発生させないための対策」を最重要事項としており、「電線のショートによる被害防止対策の強化」策を以下に打ち立てた。

・ 一定の範囲ごとに断路器を設置するなど、ショートした場合においても影響を局所化するための措置

・アナログ式感知器と電線の接続部分について耐火テープで熱的な抵抗性を向上させるなど、確実にショートの発生を防止するための措置 (スプリンクラー設置等で措置が講じられている場合は別)。
 
近年は倉庫の利用方法が多様化していることを踏まえ、国土交通省が基本的方針を示し、事業者が自らの工夫によって必要な対策を講じる。

防火シャッターの点検に関する留意事項  では「感知器及び防火シャッターが適切に作動すること」「防火シャッターの閉鎖障害となる物品等が放置されていないこと」「コンベヤの連動システムが、防火シャッターと連動して正常に作動すること」の点検を含めた防火シャッターに関する維持保全の責任者(維持保全責任者)を定める。 維持保全責任者は、点検結果を記録し、記録した図書を適切に保管。コンベヤの新設や変更を行った場合は、次に掲げる項目の点検を確実に行うことが示された。

・ コンベヤが防火シャッターの降下を妨げる位置に配置されていないこと

・ 連動システムを有するコンベヤの場合、連動システムの電源が失われた場合や、関係する電線がショートを生じた場合であっても、コンベヤが防火シャッターの降下を妨げない機構(フェイルセーフ機構)を有しているものであることを確かめること

・ 避難安全性を確保するため、従業員が作業のために継続的に使用する部分については、居室を対象とした建築基準法の規定(例えば、直通階段まで安全に避難するための歩行距離の設定や、非常用の照明装置の設置など)に適合していること

加えて、国交省では上記点検項目に適合するものであることを確認するための責任者(設置責任者)を定める。コンベヤの設置や変更を行った倉庫において、設置責任者点検結果の記録図書保管が義務付けられる。

ロジスティクス・トレンド 水上 健